昔は厳しい夏をどうやって過ごしたの?「日本家屋」に込められた、その秘密とは
記録的な猛暑になると言われている、この夏。
ふと、不思議に思ったことはありませんか?
エアコンも冷蔵庫もない時代、私たちの祖先は、夏をどのように乗り切ったのか?と。
今ほどではないものの、昔も夏は暑かったはず。
今日は夏を乗り切るための、伝統的な日本の住まいの知恵と、文化についてお話いたします。
■伝統的な日本家屋は、「夏仕様」だった!
「家の作りやうは、夏を旨(むね)とすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比(ころ)わろき住居は、堪え難き事なり」という有名な随筆があります。
吉田兼好が鎌倉時代に執筆した「徒然草」の中の一節です。
現代語訳にすると「家は夏に合わせた作り方をすべきだ、冬はどんなところにも住むことができるが、夏に暑い家に住むのは耐えられない」といったところでしょうか。
吉田兼好も夏の暑さは苦手だったようです。
この徒然草にあるように、日本の伝統家屋は“夏仕様”で造られていました。
■夏の直射日光を防ぐ、大きな屋根の庇(ひさし)と、風通しの良い間取り
では、伝統的な日本の伝統家屋はどのような造りになっていたのでしょうか?
日本の伝統的な住まいでは、部屋の外廻りに縁側(えんがわ)をもうけ、屋根の庇(ひさし)はとても長く造られていました。
そのため、夏の直射日光がほとんど部屋に入らないような作りになっています。
また部屋と部屋の間仕切りは壁でなく襖(ふすま)で隔たれているため、この襖(ふすま)を全て開ければ部屋がつながって風通しもよくなります。
昔の日本の住まいは、夏の日射を遮り、自然の風を感じられる涼しい工夫が施されていたわけです。
しかし夏が涼しい一方で、部屋の中に日射熱を取り入れにくいため、冬は寒いという弱点を併せ持っていました。
■一年の半分を過ぎた6月30日に行う行事、六月晦日ってどんな行事?
家の工夫以外にも、昔の人は打ち水、風鈴、うちわ、すのこ、よしずやすだれなどを使い、「涼」を楽しみ夏を乗り切る工夫をしていました。
その他にも、「夏越祓(なごしのはらえ)」といって、1年のちょうど折り返しにあたる6月30日に、この半年の罪や穢れを祓い、残り半年の無病息災を祈願する神事を行っていました。
「夏越祓」は古くから寺社で行われており、この日、神社の鳥居の下や境内には、茅萱(ちがや)で作られた大きな輪が用意されます。
参拝者が「水無月の夏越の祓いをする人は、千歳の命のぶというなり」などと唱えながらくぐると、夏の疫病や災厄から免れるといわれています。
また、「夏越祓」には「水無月」というお菓子を食べます。
「水無月」は、白の外郎生地に小豆をのせ、三角形に包丁された菓子ですが、小豆は悪魔払いの意味があり、三角の形は暑気を払う氷を表しているといわれています。
いかがでしたか?
昔の人は、住まいに生活、さまざまな工夫で暑い夏を乗り切っていたのですね。
「水無月」は各和菓子店において6月期間限定で販売されています。
一年の折り返しに、感謝と祈りをこっめて「水無月」をご賞味されてみてはいかがでしょうか。